「ファンの音がうるさくなってきた。大切にしているPCなので、グリス交換で改善したい。サーマルパッドが必要かどうかは、見てみて相談しながら決めたい」
そんなご依頼をいただきました。
RTX 3080TiのGPUを分解すると、サーマルパッドがポロポロと崩れ落ちる状態まで劣化していることが判明。状況をご説明しご同意いただいたうえでサーマルパッド交換まで実施した事例です。
作業前はサーマルスロットリングによる処理落ちでベンチマーク測定が不能な状態でしたが、作業後はHotSpot温度が19℃以上低下し、スコアも正常に計測できるようになりました。
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GPUグリス塗り替え・サーマルパッド交換代行。分解・作業・動作確認まで一貫対応
ご依頼の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | NVIDIA GeForce RTX 3080Ti・CPU |
| 当初の依頼内容 | CPU/GPUグリス交換・サーマルパッドは状態確認のうえ相談 |
| 実施した作業 | CPU/GPUグリス交換・GPUサーマルパッド交換 |
| 対応形態 | 郵送(PC本体送付→返送) |
作業前の状態
グリスの状態
GPUダイ上のグリスは劣化が進んでおり、熱伝導素材としての機能が低下した状態でした。CPUも同様の劣化が見られたため、今回はCPU・GPU両方のグリスを交換しています。
サーマルパッドの状態
GPUを分解した際、メモリ・VRM周辺のサーマルパッドがポロポロと崩れ落ちる状態まで劣化していることが判明しました。弾力を失い、触れると形が崩れるほど硬化・脆化が進んでいます。
この状態ではパッドが接触面に密着できず、VRAMやVRMの熱がヒートシンクへ正常に伝わっていません。サーマルパッドの劣化はグリスと違い外観からは確認できないため、分解してはじめて判明するケースが多いです。
状況をお客様にご説明し、交換のご提案と費用のご案内をしたところ、ご同意いただいたため追加でサーマルパッド交換も実施しました。
作業内容
1. 分解・清掃
GPU・CPUそれぞれのヒートシンクを取り外し、劣化したグリスと崩れたサーマルパッドの残滓をアルコールで丁寧に除去しました。パッドが崩れた箇所は残滓が基板側に残りやすいため、接触面を丁寧にクリーンアップしてから作業に入ります。
2. CPUグリス塗り替え
CPUダイにグリスを均一に塗布し、クーラーを組み戻しました。
3. GPUグリス塗り替え
GPUダイに新しいグリスを適量・均一に塗布しました。
4. GPUサーマルパッド交換
VRAMおよびVRMのサーマルパッドを新品に交換しました。パッドの厚みを元のものと合わせて調整し、適切な圧力でヒートシンクが密着するよう組み付けています。
5. 組み立て・動作確認
CPU・GPUともにヒートシンクを均一なトルクで締め戻し、ベンチマークで温度・スコア・動作を確認して納品しました。
計測結果
※ 温度・スコアはお客様のPCで計測した値です。CPUや動作環境によって異なりますのでご注意ください。
温度比較
| 計測項目 | 作業前 | 作業後 | 差分 |
|---|---|---|---|
| GPUコア温度(最大) | 83.0℃ | 77.4℃ | -5.6℃ |
| GPUコア温度(平均) | 73.9℃ | 68.2℃ | -5.7℃ |
| HotSpot温度(最大) | 105.3℃ | 86.1℃ | -19.2℃ |
| HotSpot温度(平均) | 92.7℃ | 76.6℃ | -16.1℃ |
| メモリ温度(最大) | 82.0℃ | 90.0℃ | +8.0℃ |
| メモリ温度(平均) | 74.1℃ | 78.1℃ | +4.0℃ |
ベンチマークスコア
| タイミング | スコア |
|---|---|
| 作業前 | 測定不能(処理落ち) |
| 作業後 | 7,062 |
結果の考察
「測定不能」から「7,062」へ
作業前は高負荷時にサーマルスロットリングが激しく発生し、GPUクロックが大幅に低下した結果、ベンチマークが処理落ちして完走できない状態でした。
グリスとサーマルパッドの両方を交換することで熱の逃げが改善され、スロットリングが解消。GPUが安定したクロックを維持できるようになり、ベンチマークを問題なく完走できる状態になりました。
HotSpotが19℃以上低下した理由
HotSpot温度(GPUダイ内の局所的な最高温度)が105.3℃から86.1℃へ、19.2℃の大幅低下を達成しました。
今回の改善幅が大きいのは、グリス劣化とサーマルパッド崩壊という2つの問題を同時に解消したためです。グリスの劣化が熱伝導効率を落とし、さらにサーマルパッドが崩れてVRAMやVRM周辺の熱がヒートシンクへ伝わらなくなっていたことで、ダイ内部に熱が閉じ込められた状態になっていました。両方を解消したことで、この大幅な改善につながっています。
メモリ温度が上昇した理由
サーマルパッドを交換したにもかかわらず、メモリ温度は若干上昇しています。
これはGPUのスロットリングが解消されたことでVRAMへの処理負荷が増加したためと考えられます。作業前は激しいスロットリングによりGPU全体が低クロックで動作していたため、VRAMへの負荷も抑えられた状態でした。作業後はGPUが本来のクロックで動作するようになり、VRAMが実際の高負荷を処理するようになった結果、発熱が増加しています。
コア温度が低下した理由
過去の事例ではグリス交換によってコア温度が上昇しましたが、今回はコア温度も低下しています(最大-5.6℃)。グリスのみの交換ではスロットリング解消によるクロック回復が先に効き、コア温度は上昇する傾向があります。今回はサーマルパッドの交換によりヒートシンク全体への熱伝導が改善されたことで、ダイ全体の熱がより均一・効率的に逃げるようになり、コア温度も合わせて低下したと考えられます。
まとめ
| 計測項目 | 変化 |
|---|---|
| GPUコア温度(最大) | 83.0℃ → 77.4℃(-5.6℃) |
| HotSpot温度(最大) | 105.3℃ → 86.1℃(-19.2℃) |
| ベンチマークスコア | 測定不能 → 7,062(完走) |
| サーマルパッド | ポロポロ崩れる状態 → 新品交換済み |
「グリス交換だけでいいかも」というご相談から始まりましたが、分解して初めて判明したサーマルパッドの深刻な劣化に対しても、状況をご説明してご同意いただいたうえで対処することで、処理落ちが解消されてベンチマークが完走できる状態まで改善できました。
サーマルパッドの劣化は外観からは確認できません。「ファン音がうるさい」「パフォーマンスが落ちた気がする」といった症状がある場合は、分解確認を含めたメンテナンスをご検討ください。
GPUグリス塗り替え・サーマルパッド交換代行を承ります。RTX・RX各世代対応。郵送全国対応・GPU単体での受付も可能です。
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