「中古で購入したが、ファンが全開で前に使用していたRTX3070よりもベンチマークスコアが低い」
そんなご相談をいただきました。
玄人志向のRTX 3080Tiを分解すると、グリスは比較的新しい状態でしたが、サーマルパッドが雑な取り付け状態になっていることが判明。厚みを実測して適正なパッドを発注し、グリス塗り替えとあわせて対応した事例です。
作業後はメモリ最大温度が106℃から84℃へ22℃低下し、ベンチマークスコアも6,985から7,997へ +14.5%向上 しました。
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GPUグリス塗り替え・サーマルパッド交換代行。分解・作業・動作確認まで一貫対応
ご依頼の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 玄人志向 NVIDIA GeForce RTX 3080Ti |
| 依頼内容 | グリス塗り替え・サーマルパッド状態確認・交換 |
| 実施した作業 | グリス塗り替え・サーマルパッドの厚み測定・発注・交換 |
| 対応形態 | 郵送(GPU単体送付→返送) |
分解・状態確認
グリスの状態
ヒートシンクを外すと、グリスは完全に乾燥しているわけではなく、比較的新しい状態でした。おそらく過去の分解時に塗り替えられていたものと思われます。ただし、分解のついでに新しいグリスに塗り替えることで熱伝導の維持と長期安定性を高めるため、今回も塗り直しを実施しています。
サーマルパッドの状態
問題はサーマルパッドにありました。VRAMおよびVRM周辺のパッドが、適正な厚みのものに換えられておらず、取り付けも雑な状態でした。パッドとチップの間に隙間が生じている箇所があり、熱が正常にヒートシンクへ伝わっていない状態です。
メモリ温度が106℃(最大)と非常に高い水準にあったのは、このサーマルパッドの不適正な取り付けが主因と判断しました。
各部位のパッドの厚みをノギスで実測し、適正な厚みのパッドを発注してから交換しています。
作業内容
1. 分解・清掃
ヒートシンクを取り外し、グリスと不適切なサーマルパッドをアルコールで丁寧に除去しました。各部位の接触面をクリーンな状態に整えてから作業に入ります。
2. サーマルパッドの厚み測定・発注
元のサーマルパッドをノギスで部位ごとに実測。VRAM・VRM・その他チップで適切な厚みが異なるため、各部位に合ったパッドを選定・発注しました。
3. グリス塗り替え
GPUダイに新しいグリスを均一に塗布しました。
4. サーマルパッド交換
各部位に対して、実測した厚みに対応した新しいサーマルパッドを取り付けました。チップとヒートシンクが適切な圧力で密着するよう調整しています。
5. 組み立て・動作確認
ヒートシンクを均一なトルクで組み戻し、ベンチマークで温度・スコア・動作を確認して納品しました。
計測結果
※ 温度・スコアはお客様のGPUで計測した値です。PCの環境・ケースエアフローによって異なりますのでご注意ください。
温度比較
| 計測項目 | 作業前 | 作業後 | 差分 |
|---|---|---|---|
| GPUコア温度(最大) | 92.9℃ | 87.6℃ | -5.3℃ |
| GPUコア温度(平均) | 82.7℃ | 80.9℃ | -1.8℃ |
| HotSpot温度(最大) | 103.8℃ | 96.2℃ | -7.6℃ |
| HotSpot温度(平均) | 94.7℃ | 89.3℃ | -5.4℃ |
| メモリ温度(最大) | 106.0℃ | 84.0℃ | -22.0℃ |
| メモリ温度(平均) | 98.6℃ | 78.8℃ | -19.8℃ |
| ファン回転数(最大) | 100% | 100% | — |
| ファン回転数(平均) | 89% | 80% | -9% |
ベンチマークスコア
| タイミング | スコア |
|---|---|
| 作業前 | 6,985 |
| 作業後 | 7,997(+14.5%) |
結果の考察
メモリ温度が22℃低下した理由
今回の最大の改善ポイントはメモリ温度です。最大106℃から84℃へ22℃低下しました。
元のサーマルパッドは、適正な厚みのものに換えられておらず取り付けも不均一な状態でした。パッドが密着していない箇所ではVRAMの熱がヒートシンクへ伝わらず、メモリが過熱した状態になっていたと考えられます。適正厚みのパッドに交換したことで密着性が回復し、VRAMの熱がヒートシンクへ正常に伝わるようになりました。
コア・HotSpot温度の改善
グリスは完全には乾燥していなかったため、コア温度の改善幅は比較的小さい数値にとどまっています(コア最大-5.3℃)。ただしHotSpotは最大-7.6℃と一定の改善があり、グリスの塗り替えによるダイからヒートシンクへの熱伝導の維持・向上が効いています。
ファン回転数が低下した理由
メモリとコアの温度低下に伴い、GPU全体の発熱量が下がったため、ファンが高回転を維持する必要がなくなりました。ファン平均が89%→80%へ低下し、動作音の改善にもつながっています。
スコアが14.5%向上した理由
作業前はメモリの過熱によりGPU全体のスロットリングが発生していた可能性があります。メモリ温度が正常な範囲に収まったことでスロットリングが解消され、GPUが安定したクロックで動作できるようになりました。スコアの向上はこの効果が主因です。
まとめ
| 計測項目 | 変化 |
|---|---|
| メモリ温度(最大) | 106.0℃ → 84.0℃(-22.0℃) |
| メモリ温度(平均) | 98.6℃ → 78.8℃(-19.8℃) |
| HotSpot温度(最大) | 103.8℃ → 96.2℃(-7.6℃) |
| ファン回転数(平均) | 89% → 80%(-9%) |
| ベンチマークスコア | 6,985 → 7,997(+14.5%) |
分解歴があるGPUでは、過去の作業でサーマルパッドが適正なものに換えられていないケースがあります。外観からは判断できないため、分解して厚みを実測してはじめて把握できます。
今回はグリスの状態が比較的良好だったにもかかわらず、サーマルパッドの不適切な取り付けがメモリの過熱を引き起こしていました。グリス交換だけでは改善しない過熱・スロットリングの症状は、サーマルパッドが原因であるケースが少なくありません。
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